最近静岡県「富士市」や「裾野市」でクマが出没しており、記事化されている。この記事を例に、「富士」の用例について考えていきたい。
静岡・裾野でクマ警戒続く 下校支援を延長、富士ではキャンプ場閉鎖(朝日新聞WEB版 2026年6月3日 11時00分)
クマの出没が相次いでいる静岡県裾野市が警戒を続けている。巡回パトロールを継続し、小中学校への下校支援も5日まで延長した。一方、富士市でも先月30日にクマと思われる動物が目撃され、今月いっぱい市営キャンプ場を閉鎖する。
一方、隣接する富士市で目撃情報があったのは30日早朝だった。同市須津の林道で、体長70センチくらいのクマと思われる動物が目撃され、市は6月1日から近くの須津山休養林キャンプ場を閉鎖した。2日にはセンサーカメラも設置した。
市内や周辺の行楽施設も警戒を緩めていない。富士サファリパークは5月22日以降、「ウォーキングサファリ」の利用を一時中止。裾野市にほぼ隣接する「富士山こどもの国」(富士市)も、夜間の安全を考え、アウトドア宿泊施設の営業を当面の間、休止している。
裾野市でクマの目撃が相次いだのは5月から。県自然保護課によると、5~7月ごろは親と生活していた若い個体が親離れをして、ほかの生息場所を求めて移動する「分散期」と呼ばれる時期で、警戒心が薄く、人の前に出てきやすいという。
県によるクマの生息実態調査(2024年度)によると、富士川以西の南アルプス地域に441頭、富士地域には102頭、県内全域では計543頭が生息していると推計されている。富士地域のクマはほかの地域から道路などで分断されて、生息区域が狭くなり、県のレッドデータブックでは、「絶滅のおそれのある地域個体群」に分類されている。(抜粋)
この1つの記事から、「富士」を冠する用語を抜き出してみる。
このように沢山の「富士」が確認されるわけであるが、この差異は地元民にしか判別は不可能であろう。また地元民でも判断が難しいものがある。私が見る限り、「富士」は概ね以下の7つに分類されると思われる。
- 富士
- 富士市
- 富士サファリパーク
- 富士山こどもの国
- 富士川以西
- 富士地域
このように沢山の「富士」が確認されるわけであるが、この差異は地元民にしか判別は不可能であろう。また地元民でも判断が難しいものがある。私が見る限り、「富士」は概ね以下の7つに分類されると思われる。
- 富士(富士山を指す)
- 富士(「朝日」と同じような用例で用いる)
- 富士地区(富士宮市・富士市)
- 富士地域(富士山麓一帯を指す)
- 富士市(富士市全域を指す)
- 富士(富士市のうち旧富士市エリアを指す)
- 富士〇〇(固有名詞)
「1」は富士市の「富士と港の見える公園」などが該当するだろう。当たり前であるが、旧富士市が見えるという意味ではない。"富士山が見える"という意味となる。
「2」は記事でも見えた「富士サファリパーク」などが該当する。ただ「1」との完全な棲み分けは難しい。
「3」は富士宮市・富士市を総称して用いることが多い。「岳南地域」と言うこともある。
「4」は記事でも確認された言葉であるが、統計や地域分類でも多く用いられている言葉である。
「5」は口語的に"出身は富士です"といった形で用いられる。これは富士市自体を指す場合である。
「6」は会話で"富士?それとも吉原の方?"というような用いられ方をする場合が多い。「吉原」という言葉が登場したことで、初めて狭義の話をしているのだと分かるケースが多い。またイオンタウン富士南には「→富士」「←吉原」といった看板もあるようだ。これもこのケースが該当する。
「7」は富士を冠する固有名詞である。例えば富士氏を指して口語的に「今川が…富士が…」と用いるようなものが該当する。
つまり以下の文章中における「富士」の意味は、全て異なるということになる。
A:静岡県出身なんですね。静岡県の何処ですか?B:富士です。A:え?同じですね。吉原の方ですか?それとも富士の方ですか?B:吉原の方です。A:私もそうです。またお会いできたら嬉しいですね。B:そうですね。最近は「富士と港の見える公園」に行くことが多いです。A:私は行ったことが無いですね。景色は良いんですか?B:「ドラゴンタワー」というものがあって、富士地区が一望できますね。A:広いんですか?Bはい、阿字神社という神社もあります。浅間大社(富士宮市)の神職である富士大宮司らの参詣地でもあったみたいですよ。A:富士大宮司というと、あの富士の一族の?B:そうですね。
こんな具合であるが、実際は会話の中で探りながら分類しているのが実情である。勿論、齟齬が生まれることは珍しくない。最後の「富士の一族」は、以下のようなものである。
武将の家紋 何が出る? 富士宮市公認ガチャ「100パターン」 /静岡(毎日新聞 2023/6/15 地方版)
富士山の世界文化遺産登録10周年と今夏の開山を記念して、富士宮市は、地元ゆかりの戦国武将の家紋をあしらったマグネット入りのカプセル玩具の販売を始めた。イオンモール富士宮に期間限定で自動販売機を設置した。
市の名前にちなみ、「宮ガチャ」と名づけた。1個200円で、自販機にお金を入れてレバーを回すと全7種のうちどれかが出てくる。マグネットには、徳川家康や織田信長の他、今川、武田、北条、富士各氏いずれかの家紋か富士山がデザインされている。(抜粋)
また富士宮市の人が市内の大字である「大中里」を「中里」と略す場合も多く、富士市に「中里」という大字があるため、互いに会話がすれ違っているなんてこともある。
そもそも記事のタイトルにもある「裾野」も、判断が難しい言葉の1つである。単に富士山の麓を指して「裾野の方」といった形で用いることも決して珍しくはないからである。この場合"裾野市という意味で言っている?"と聞き返すことも珍しくはない。記事は「静岡・裾野」とあったので、裾野市を指すのだろうと見当が付くという感じである。
会話の中で、その人が言う"富士"が最後まで分からないということも珍しくはない。端的に言おう。
その「富士」が"富士市"を指すのなら、はっきり"富士市"と言ってもらいたいものである
そうすれば、こちらは大分察しが付くのである。つまりこのカオスさは、気が利かないことから由来するのではないかと思われるのである。
- おわりに
最近は「吉原」という言葉すら用いられなくなってきており、(旧)富士・吉原の区別もつかなくなってきているように思う。吉原においては、吉原宿の歴史も理解している人は殆ど居ないように思われる。個人的には、往古「吉原湊」と呼ばれた場所が「吉原港」として開港されなかったことが大きいと感じている。
現在、富士市の市制施行60周年を記念し、シリーズとして記事の投稿を進めている。20記事くらいを予定しているため、是非ご覧いただきたく思う。
2:「富士地区の「富士」を巡る会話はなぜカオスなのかを考える」